会計事務所で実務経験を積みながら税理士試験の勉強をするという人は非常に多いですね。というか、20代〜30代の人で税理士事務所にいる人はほとんどがそうだと思います。
実体験から言わせていただくと、会計事務所での実務をこなしながら税理士試験に合格する!というのは簡単なことではありません。
※もちろんそれを実現している人はたくさんいるので、決して不可能ではないですよ。
ただ、仕事はせずに勉強に専念している人であっても5科目合格までこぎつけるのは至難のわざですから、会計事務所で実務経験を積みながら税理士資格取得を目指している方は、職場の環境選び(どういう会計事務所に入るか)は慎重に行うようにしましょう。
ここでは私が過去に会計事務所で一緒に働いていた人で、税理士資格に合格できた人と、できなかった人とでは職場選びや勉強の仕方にどんな違いがあるのか?について書きたいと思います。
この記事の目次
税理士資格取得を応援してくれる会計事務所の見分け方
「税理士試験の勉強がしやすい環境であるか」を見分けるポイントはいくつかあります。
これから会計事務所の転職活動を行う人は、転職活動で以下のようなことをチェックしておくと良いでしょう。
「税理士資格保有者が所長しかいない」は要注意
求人に応募する予定の会計事務所に、ホームページがあれば確認してみてください。
大抵は従業員数と、そのうち何人が税理士資格保有者か(科目合格者か)などの情報が載っています。
ここで、従業員数がある程度の数(10人ぐらい)いるのに、税理士資格保有者が所長だけという会計事務所には注意したほうが良いです。
仕事が忙しすぎて従業員はほとんど税理士資格取得をあきらめているというケースが考えられます(あるいは、「税理士資格を勉強しながら仕事をする」という文化がない事務所である可能性があります)
もしそういった職場環境だと、あなたが入社しても税理士資格取得までこぎつけられる可能性は下がってしまうものと考えておくべきです。
まわりに科目合格をしている人や5科目合格をしている人がいる職場とそうでない職場では、あなた自身の合格可能性に大きな差が出ることを知っておいてください。
面接では「1人で何社ぐらいのお客さんを担当するのですか?」と聞いてみる
面接にまで行けた会計事務所があるのなら、1人でだいたい何社ぐらいのお客さんを担当するのかを聞いてみましょう。
これには面接でやる気をアピールできるというメリットもあります。
職員が1人で担当するお客さんが10社ぐらいであればかなり余裕を持って仕事をすることができるでしょう。
ですが、20社(多いところでは30社)ということになると相当に仕事は忙しいと思っておく必要があります。
もちろん、お客さんの会社の規模によって仕事の負担は違うので上記はあくまでも目安ですが、担当する会社が20社を超えているようなら勉強時間の確保はある程度厳しくなるということは理解しておくと良いでしょう。
面接で直接「勉強時間は取れますか?」と聞くのは実はマイナス評価
会計事務所の面接では、「勉強時間は取れますか?」という質問はややマイナス評価であることを理解しておきましょう。
採用する事務所側としては仕事を最優先でして欲しいと考えるのが当然です。
普通の社会人であれば勉強は仕事の後にやるのが普通ですから、そもそもこういう質問をすること自体「社会人としてどうなの?」と思われる可能性があります(もちろん、会計事務所転職希望者にに税理士志望者が多いことは事務所側も理解していますが)
せっかく面接まですすめた会計事務所があるのなら、評価を下げるような質問の仕方はしないようにしましょう。
どのぐらいの業務量なのかを確認する方法としては、やはり上記の「何社ぐらいのお客さんを担当しますか?」という質問の仕方がベターです。
[ad#co-2]会計事務所で働きながら税理士に合格する人はここが違う
会計事務所に入社するほとんどの人が税理士志望ですが、短期間で合格できる人と、何年たっても合格に至らない人がいるのは事実です。
ここでは私のまわりで、会計事務所で仕事をしながら短期間で税理士試験に合格していった人の例を紹介します。
①資格学校には絶対に通うべき。独学はほぼ不可能と思っておこう
まず、資格学校(TACや大原、大栄が有名です)には必ず通いましょう。
税理士試験は独学で合格するのはほぼ不可能な試験です。まして「仕事をしながら独学で受かる人」というのは私の知る限りでは聞いたことがありません。
通信制スクールで受かる人も少数派です。資格学校に通うならやはり直接講義をうけられるところがおすすめですね。
あと、資格学校に入る前には十分に各資格学校の講座の内容を事前にリサーチしておくことも忘れないでください。
資格学校とひとことでいっても、講座の雰囲気や講座を休まざるをえなかった時のフォロー内容(補講やDVD講義などをしてくれます)はさまざまですので、あなたの勉強スタイルにあった資格学校を選ぶ必要があります。
TACだけから資料請求する、あるいは大原だけから資料請求するといったように、かたよった情報収集の仕方は避けましょう。
一度に複数の資格学校から資料請求をして、届いたパンフレットを横に並べて比較するようにするとそれぞれの資格学校の特徴がよくわかりますよ。
②資格の勉強で学んだことと実務をリンクさせる
せっかく会計事務所にいるのですから、実務と勉強の内容をリンクさせて効率を上げていきましょう。
例えばお客さんの確定申告を1回やってみると、税法科目の所得税や消費税の計算の流れを具体的に知ることができます。
決算書作成や毎月の帳簿チェック(巡回監査)では簿記や財務諸表論の知識を深めることができますので、常日頃から「この業務はどの試験科目の内容とリンクしているか」を意識しておくと、業務にとっても勉強に取っても良い効果が見込めます。
③会計事務所入社後1年間は実務優先で(ただし、流されてはダメ)
実務経験を積みながら税理士資格を取得することがあなたの人生設計に最優先の課題だったとしても、入社1年目ぐらいは実務を最優先にしましょう。
入社当初は仕事を覚えることに力を注げば、まわりからの印象が良くなるだけでなく、後々仕事と勉強のバランスを取りやすくなります(仕事に早く慣れることができるためです)
ただし、仕事の忙しさや同期や先輩とのコミュニケーションに流されすぎるのはいけません(もちろん、全部断るようなことはしては事務所にいづらくなるのでダメですが)
税理士資格を取得するという希望があるのなら、誘惑に負けないようにして勉強時間をつくるべきです。
会計事務所で働きながら税理士資格に合格することは、非常に難易度が高いことではありますが、実現している人は確実にいます。
今回ご紹介した「うまく合格までこぎつけている人の動き方」を参考に、ぜひ勉強と実務の文武両道で頑張ってみてくださいね。
[ad#co-3]税理士補助をしながら、資格の勉強はできる?
税理士になるためには、税理士資格の試験に合格するだけではなく、会計事務所などに所属しながら実務経験を積む必要があります。
実際、会計事務所で働いている人は、税理士補助の仕事をしながら資格スクールなどに通って税理士試験の勉強をするというケースが非常に多いです。
これから会計事務所への転職を目指す人にとってもっとも心配なのは「税理士補助の仕事が忙しくて勉強時間を確保できなくなってしまうんじゃ無いか?」という点ですよね。
私もこの点はとても不安だったので、あなたの気持ちはよくわかります。
ここでは私や私の周りの人たちがどのようにして会計事務所で税理士補助の仕事をしながら税理士資格の勉強をしていたのか?について体験談を書かせていただきます。
会計事務所で税理士補助の仕事をしながら税理士資格合格を目指している人は参考にしてみてくださいね。
平日は3時間程度勉強、土日は10時間以上勉強が基本
私や私の周りの税理士資格保有者の場合、平日は仕事が終わってから資格スクールに直行して自習室で3時間ぐらい勉強(あるいは講義を受ける)、土日も資格スクールに行って10時間以上は勉強する…というのがごく当たり前の光景ですね。
税理士試験ははっきりいって超難関です。
計算問題の演習を山のようにこなす必要があるだけではなく、税法の理論をお経を覚えるようにひたすら暗記することが必須になります。
税理士試験に合格した後には独立開業という魅力的な道が一気に開ける分、試験にはしっかりとした覚悟でのぞまないといつまでたっても合格できない…なんてことになってしまうので注意しましょう。
もちろん、会計事務所で働きながら税理士試験に合格する人はたくさんいますので希望を捨てることはありません。
税理士資格は5科目の「科目合格制」なので、1年に1〜2科目といった形で長期戦略で取り組めば、仕事をしながらでも十分に合格の見込みはありますよ(実務をしながらの方が勉強を理解しやすいという側面もありますし)
独立を目指す人も会計事務所で3年〜5年は修行をするのが王道
基本的に税理士を目指す人は独立志向の人が多いですから、会計事務所で3年〜5年ぐらい実務経験を積んだら独立開業をするというのが一般的ですね。
資格を取ってから実務経験を積むべきか、それとも実務経験を積むのと同時進行で試験合格を目指すか…は永遠のテーマですが、個人的には実務経験を積みながら試験勉強をするのがおすすめです。
試験勉強に集中するとなると、どうしてもその間の収入は非常に心もとなくなりますし、キャリアとしても数年間のブランクができてしまいます(これは転職活動をするにあたって非常に不利に働きます)
まずは何が何でも転職活動を頑張って会計事務所に入社を決める。入社が決まったら3年間〜5年間は実務を覚えながら資格試験の勉強をする。
これが税理士として独立を目指す人の王道的なキャリアの築き方だと思います。
勉強時間確保のためにも、会計事務所はしっかり選ぼう
こう書くと元も子もないかもしれませんが、税理士補助の仕事をしながら勉強時間をしっかり確保できるかどうかは「あなたが入社する会計事務所の方針次第」という面もあります。
税理士補助として入社してくる従業員の税理士資格取得に協力的であるかどうかは、その会計事務所の所長の考え方による部分が非常に大きいのです。
なぜかというと会計事務所の規模というのは従業員10名以内の小さな組織であることがほとんどであるため、所長税理士の権限が非常に大きいのです。
会計事務所の中には「税理士の勉強ばかりしていて、実務がおろそかになっては困る」「税理士の試験勉強の時間をあまり与えてしまうと、資格取得してすぐ仕事を辞めてしまう」といったように考える会計事務所も少なからずありますので注意しましょう。
会計事務所を目指して転職活動を行うときには、その事務所には何人ぐらいの資格保有者や科目合格者がいるのか?といった点も事前にチェックしておくことが大切です(面接で直接聞いてみるのもいいでしょう)
面接が苦手な人は、転職エージェントを活用しよう
面接が苦手で、面と向かって確認しにくい…という方は、転職エージェントに登録しておくのがおすすめです(無料で利用できます)
転職エージェントに自分の希望を事前に伝えておけば、最初からあなたの希望条件に合う転職案件だけを紹介してくれますので、効率的に転職活動を進めることができますよ。
あと、私の経験上、転職エージェントは「分野に特化している」ということが非常に重要だと思います。
会計事務所転職に関して言えば、税理士試験の勉強時間をきちんと確保できるかどうか?は私たちとしては非常に気になるポイントですが、こういったことは会計転職専門のエージェントでないとなかなか理解してもらえません。
経理や会計事務所への転職を目指すのであれば、必ず会計職専門の転職エージェントに依頼するようにしてくださいね。
[ad#co-4]税理士の実務を見すえた学習計画の立て方
税理士試験は科目合格制(1年に1科目ずつ5科目合格でOKな試験)ですので、働きながら税理士を目指す!とい人は非常に多いです。
ただし、税理士試験は数ある国家試験の中でも最高レベルに難しい試験ですので、働きながら税理士試験合格を目指すなら計画をしっかりと立てておくことが必要です。
いかに難関試験といえども、やはり5科目合格しなければ年収アップにはなかなか繋がりませんので、せっかく働きながら勉強するという労力をかけるのならぜひ短期間での5科目合格を狙いましょう。
この記事では、働きながら税理士を目指す方向けに、学習計画の立て方(科目ごとの必要勉強時間など)のポイントについて解説させていただきます。
各科目の勉強時間はどのぐらい必要?
税理士試験の各科目については、およそ以下の勉強時間が必要と言われています(各資格スクールが公表している数字の平均値です)
- 簿記論 :450時間
- 財務諸表論:450時間
- 所得税法 :600時間
- 法人税法 :600時間
- 相続税法 :450時間
- 消費税法 :300時間
- 固定資産税:250時間
- 事業税 :200時間
- 住民税 :200時間
- 国税徴収法:150時間
- 酒税法 :150時間
一見すると、必要な勉強時間が少ない試験科目を選択するのが有利なようにも思いますが、必ずしもそうではありません。
税理士試験は合格者定員が決まっている相対評価の試験ですから、受験者みんなが「必要勉強時間が少ないところを狙おう」と考えた場合には、その科目が激戦区の状態になります。
当然、試験では高得点をとらないと合格になりませんから、かえって難易度が上がってしまうということも考えられるのです。
どの受験科目を選ぶべきか?に関しては、会計事務所などで働きながら税理士を目指すのであれば、実務とのリンクを考えておくと良いでしょう。
消費税法や相続税法、住民税に関しては実務でも頻繁に知識がとわれる分野ですので、実務で具体的な仕事をこなしている人であれば試験勉強もイメージがつきやすく有利になることも考えられます。
働きながら税理士になるなら計画をしっかり立てよう
働きながら税理士を目指す場合、勉強だけに専念できる人よりも効率重視で計画を立てていく必要があります。
ここでは税理士試験の各試験科目について、対策を立てる上でのコツについて解説させていただきます。
簿財2科目のコツ
まず、簿記論と財務諸表論の2科目については同時進行で進めましょう。
この2科目は勉強内容でリンクしている部分が非常に多いので、やや負担は大きいと感じても1年で2科目同時に受験をするべきです。
具体的には、1年目から簿財2科目を同時受験し「どちらか1つでも良いから合格」という計画を立てるのが良いです。
その上で、2年目には受からなかった科目の方に集中的に取り組んで2科目取得を目指しましょう。
※3年または5年で税理士5科目合格を目指す計画の立て方については、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
法人税法、所得税法のコツ
法人税法と所得税法については、どちらか1つを選択しましょう。
税理士として仕事をしていく上では、この2つの税法についてはしっかりと知識を持っておくのが良いのですが、2つとも受験科目として選択してしまうと負担が大きくなりすぎてしまうのでおすすめしません。
なお、この2科目に関しては1年の勉強で受かるという計画は立てないのがコツです。
1年から3年ぐらいかけて、別の税法科目と同時進行で受験勉強を続けていくのがスムーズに5科目合格に至るためのポイントと言えます。
その他の税法の勉強のコツ
せっかく働きながら税理士試験の勉強を進めるのであれば、仕事で得られる具体的な業務知識と、試験勉強とを上手にリンクさせながら進めましょう。
これは勉強に専念している人(仕事をせずに勉強だけに専念している方)は得ることのできない大きなメリットと言えます。
会計事務所(税理士事務所)で働きながら試験勉強をすることを前提とすると、業務知識として持っておいたほうが良いのは消費税法、住民税法、相続税法の知識です。
消費税法は実務でも重要
特に、消費税法の知識は税理士として仕事をしていく上では必須ですね。
消費税法は科目として独立している傾向が強く、簿記や財務諸表論の知識がない人でも取り組めるという良さもあります。
そのため、場合によっては税理士試験を始めた初年度から消費税法に取り組むという戦略も考えられます。
相続税法は税理士として稼げる分野
相続税に関する実務は、税理士として仕事をしていく上で高い報酬を得られる可能性が高い「稼げる分野」という特徴があります。
将来的に税理士として独立や転職を考えている人は、あえて相続税法を試験科目に選んでおくというのも試験合格後までにらんだ戦略として有効です。
なお、相続税法に関しては業務としてあつかっている会計事務所とそうでない会計事務所がありますので、その点は注意してくださいね。
資格スクールは必須
なお、働きながら税理士試験合格を目指すのであれば、資格スクールに通うのは必須です。
私は10年以上税理士業界にいて、いろんな合格者の人と会ってきましたが、資格スクールに通わずに独学で合格したという人はかなり年配の人を除いて会ったことがありません。
税理士試験は独学で勉強して合格するというのは非常に難しく、ほとんど現実的ではありません。
すでに10年以上受験勉強を続けているという人や、税法についての研究者としての実績があるような人でない限りは資格スクールに通って合格を目指しましょう。
個人的には資格スクールはLECまたはTACをおすすめしますが、いくつか資料請求をしてみて費用面などから検討してみると良いでしょう。
学習計画の立て方まとめ
以上、働きながら税理士5科目合格を目指す!という方向けに、学習計画の立て方のポイントについて解説させていただきました。
税理士試験は会計に関する国家試験の中では公認会計士と並んで非常にレベルの高い資格です。
働きながら税理士を目指すのは一筋縄ではいかないだけに、これを達成することができれば収入や転職キャリアで大きなステップアップになることは間違いありません。
税理士試験は科目合格制ですから、長期的な計画を着実にこなしていきさえすれば高い確率で合格できる試験です。
今回解説させていただいた内容を参考に、ぜひ将来を見すえながら頑張ってみてくださいね。